サッカーをするお子さんが整形外科で「グロインペイン症候群(鼠径部痛症候群)」と言われ、「これからどうすればいいのだろう……」と不安を抱えていらっしゃる保護者の方へ。
グロインペイン症候群とは、足の付け根(鼠径部:そけいぶ)やその周辺に痛みが出る状態をまとめた呼び名です。どこか1か所の骨や靭帯を痛めた単独のケガではなく、太ももの内側・お腹の奥・恥骨・股関節など、いくつもの場所への負担が重なって起きるため、「症候群」と呼ばれています。
この記事では、お子さんに起きている痛みの正体、ご自宅でできる簡単なチェック法、回復を遅らせないための注意点、そして試合へ復帰させる確かな目安について、医学論文のデータと当院での実例をもとに分かりやすくお伝えします。
この記事の内容は、解説動画でもご覧いただけます。痛みの正体から、おうちでできるチェック、試合に戻る目安まで、順番にお話ししています。お子さんと一緒に確認したいときは、こちらからどうぞ。
お伝えしたい大切なポイントは、次の2点です。

- 「ただ休む」のではなく、休んでいる間に必要な運動を進めること
- 復帰させるかどうかは、日数ではなく「実際の動作で痛みが出ないこと」で判断すること
グロインペイン症候群とは?症状と、どんな痛みが出るのか
キックやダッシュ、急な切り返しのたびに足の付け根へ少しずつ負担が積み重なり、ある日「痛い」と気づく——これがもっとも多い始まり方です。
転んで骨が折れるようなケガと違って「いつ痛めたのか」という瞬間がはっきりしないため、お子さん自身も違和感をうまく言葉にできず、気づいたときにはかなり症状が進んでいたというケースが少なくありません。
国際的には、2014年に専門家が集まって用語を整理したDoha(ドーハ)合意によって、痛む場所や痛みが出る動作から主に次の5つのタイプに分類されています(出典:Weir et al., 2015)。

| 分類(タイプ) | 主に痛む場所 | 痛みが出やすい動作 |
|---|---|---|
| 内転筋関連 (最多) | 太ももの内側、恥骨のすぐ近く | インサイドキック、脚を横に開く、両膝を閉じる |
| 腸腰筋関連 | 足の付け根の前側、お腹の深いところ | もも上げ、脚を後ろへ引く、ダッシュ |
| 鼠径管関連 | 下腹部、足の付け根の少し上 | 上体起こし(腹筋運動)、咳やくしゃみ、急な切り返し |
| 恥骨関連 | 骨盤の前の中央(恥骨結合部) | 走る・蹴る・切り返すなどサッカーの動作全般 |
| 股関節関連 | 股関節の奥深く | 深く曲げて内側へひねる、あぐらをかく |
※長引く足の付け根の痛みを訴えた選手207名を調べた研究では、サッカー選手の69%(全体では58%)が「内転筋関連」でした(出典:Hölmich, 2007)。なお、この5つのほかに稀な病気が隠れていることもあるため、強い症状や気になる違和感があるときは医療機関での精密検査が必要です。
痛みの感じ方も、「内側がピキッと引っ張られる」「ボールを蹴る瞬間にズキッと走る」「奥のほうが重だるくズーンと痛む」など、痛む場所によってさまざまです。
痛むタイミングから分かること
「練習の前は痛がっていたのに、動いている最中は平気そう。でも練習が終わるとまた痛がる」——これが見逃しやすい要注意パターンです。
ウォーミングアップで体が温まると、一時的に痛みを感じにくくなっているだけで、組織への負担はどんどん蓄積していきます。お子さんが「練習中は平気だから大丈夫!」と言っていても、安心はできません。
また、「朝起きて最初の一歩」や「座った状態から立ち上がる瞬間」に突っ張るように痛むのは、筋肉や腱のこわばりのサイン です。さらに練習の有無に関係なく、夜じっとしていてもズキズキ痛むような場合は、組織がかなり過敏になっている状態と考えられます。
どんな子どもがなりやすい?原因とサッカーに多い理由
13〜19歳を対象にした研究をまとめた分析では、股関節や足の付け根の痛みがある人は、一般の10代に限った研究では約7%、対象を限定せず研究全体をまとめると約12%と報告されています(出典:French et al., 2020)。 決して珍しいトラブルではありません。
研究で指摘されている「なりやすい主な要因」は次の通りです(出典:Whittaker et al., 2015/Tak et al., 2017)。
- 過去に同じ場所を痛めた経験がある (くり返し確認されている要因)
- 太ももの内側(内転筋)の力が弱い (お尻の外側の筋力と比べて弱い場合も含みます)
- 競技レベルが高い (練習や試合の強度が高い)
- その競技に必要な練習が足りていない (体が競技の動きに慣れていない)
- 股関節の回旋の動きが、左右合わせて狭い (内側+外側の合計が85度未満だと、そけい部痛が起きやすいと報告されています)
サッカー少年・少女にグロインペイン症候群が多いのは、強いキック動作に加え、ダッシュ・急停止・素早い方向転換による激しい「ねじれ」が股関節へ繰り返し加わるためです。
また、成長期は急激に身長が伸びて骨が成長する一方で、筋肉の発達が追いつきにくく、まだやわらかい骨盤に強い牽引力(引っ張られる力)がかかりやすいデリケートな時期でもあります。
股関節が硬いと、なぜ足の付け根が痛むのか?
股関節がスムーズに回らない分を、骨盤の前側(恥骨:ちこつ)が無理にねじれて肩代わりしてしまうからです。

たとえば、股関節の回旋の動きが狭いと、ボールを蹴ったり切り返したりするたびに骨盤のつなぎ目が余計にグラグラと動いてしまいます。その結果、恥骨や太ももの内側の筋肉の付け根に、過度なねじれの力が集中してしまうのです。
当院でも、足の付け根を痛がるお子さんの体を評価すると、次のような筋肉が硬くなっているケースが非常によく見られます。
- 太ももの内側の筋肉(恥骨筋・長内転筋) :脚を内側に閉じる筋肉
- お腹の奥深くの筋肉(腸腰筋:ちょうようきん) :太ももをお腹へ引き上げる筋肉
- 太ももの外側の筋肉(大腿筋膜張筋:だいたいきんまくちょうきん) :骨盤と股関節を外側から支える筋肉
これらの筋肉が硬くこわばったままボールを蹴り続けると、同じ場所に負担がかかり続けてしまいます。
ただし「硬いから痛い」と単純には言えません
ただし「硬いから痛い」と単純には言えません。
実は筋肉の硬さは、痛みの「原因」であると同時に、体を守ろうとした「結果」でもあります。
傷んでいる場所や不安定な関節があると、体は「これ以上傷めないようにしよう!」と反射的に周りの筋肉をギュッと固めてガードします。医学研究でも、この筋肉の硬さがもともとの原因だったのか、痛みをかばって固まった結果なのかは、はっきりと切り分けられていません。
だからこそ、「硬くなっている筋肉を無理にストレッチして伸ばす」だけでは元に戻らないのです。
体が「もう筋肉を固めて守らなくても大丈夫だ」と安心できる状態——つまり、体幹やお尻の筋肉がしっかり働いて骨盤が安定した状態——を作ってあげない限り、いくらほほぐしてもすぐにまた固まってしまいます。
下腹部と太ももの境目(そけい部)の奥で、組織が傷んでいることも
「できるだけ早い段階でケアを始めたほうがいい」とお伝えするのには、明確な理由があります。
鼠径部痛症候群の選手では、恥骨の周りにある腱の膜(前恥骨腱膜複合体:ぜんちこつけんまくふくごうたい)の傷みがMRIで見つかることがあると報告されています(出典:Bisciotti et al., 2024)。
そうなると、股関節の動きの悪さを骨盤が肩代わりし、さらに組織が傷んで動きが悪くなる……という悪循環から抜け出しにくくなってしまいます。まだ一時的な「筋肉のこわばり」の段階のうちに適切に手を打てるかどうか ——それが、スムーズに復帰できる子と長引いてしまう子の大きな分かれ目のひとつです。
おうちでできるセルフチェック|コペンハーゲン5秒スクイーズテスト
「足の付け根、痛くない?」と聞いても、お子さんが「大丈夫!」としか答えてくれない——そんなときに役立つ、痛みを数字で客観的に把握できる方法があります。
これはデンマークの研究機関で開発され、男子サッカー選手667名(平均24歳)で、テストとして妥当であることが確かめられた「コペンハーゲン5秒スクイーズテスト」という評価法です(出典:Thorborg et al., 2017)。

【おうちでのやり方】
仰向けで、両膝を立てる
お子さんに仰向けで寝てもらい、両膝を立てます。
両膝の間に腕を挟む
保護者の方の腕(または握りこぶし)を、お子さんの両膝の間に挟みます。
5秒間、全力で挟んでもらう
「5秒間、力いっぱいギューッと膝で挟んでみて」と声をかけます。
痛みを0〜10の数字で答えてもらう
そのとき足の付け根に痛みが出たかどうか、0(全く痛くない)から10(これ以上ないほど痛い) までの数字で答えてもらいます。
【判定のめやす】
| 数字(痛みレベル) | 信号 | おうちでの考え方・対応 |
|---|---|---|
| 0〜2 | 🟩 青信号 | 段階的に運動の強度を上げていってよい範囲 |
| 3〜5 | 🟨 黄信号 | 練習量や強度を落とし、痛みの出ない範囲に調整する |
| 6〜10 | 🟥 赤信号 | 負荷のかかる運動はいったん中止し、しっかり休養をとる |
※この数値の区切りは研究論文(Thorborg et al., 2017)に基づいています。同研究では、6以上と答えた選手はスポーツ時の股関節機能が大きく低下していたと報告されています。
※「3以上」の痛みが出た場合は、それ以上無理に繰り返さないでください。何度も痛みを確かめようとすると、傷んでいる組織を刺激してしまいます。数日に1回、体調を確かめる一環としてやさしく行ってみてください。
痛みが「数字」で見えるようになると、「本当に大丈夫なの?」と問い詰めることなく、「今日は『4』だったから、キックはお休みして体幹トレーニングにしておこう」と、落ち着いて相談できるようになります。
※このテストは日々の状態を把握するための目安です。医療機関での検査に代わるものではありません。強い痛みや歩行困難がある場合は、速やかに整形外科などの医療機関へご相談ください。
やってはいけないことは?回復を遅らせる5つのNG対応
「早く良くしてあげたい」という親心からのケアが、かえって回復を遠ざけてしまうことがあります。とくに注意していただきたいNGポイントを5つにまとめました。

痛がる場所をグイグイ強く揉む
足の付け根の痛む部分は、筋肉や腱に微細な傷や炎症が起きている可能性があります。強い力で揉むと、傷口を押し広げて悪化させる恐れがあります。当院でも痛む部位そのものを強く揉むことはいたしません。
痛みを我慢させて無理に開脚ストレッチをさせる
「体が硬いからだ」と無理やり股関節を開かせようとすると、傷んでいる太もも内側の腱や骨の付着部を無理に引っ張ることになり、かえって痛みを強めてしまいます。
湿布・アイシング・電気だけで様子を見る
冷やしたり電気をあてたりすると一時的に楽になることはありますが、低下した筋力や骨盤のグラつきといった根本的な問題は、こうした受け身のケアだけでは変わりません。
痛み止めを飲ませて無理に試合へ出す
痛みはお子さんの体が発している「これ以上動かすと壊れてしまう」という大切な危険信号です。薬で痛みだけを麻痺させてプレーさせると、重症化して長期離脱につながるリスクがあります(薬の使用については主治医にご相談ください)。
「2週間休んだから」と日数だけで復帰させる
これがもっとも多い落とし穴です。「安静期間が過ぎたから大丈夫」と復帰させても、キックやダッシュの動作で痛みがぶり返すケースが多発します。復帰は日数ではなく「実際の動作で痛みが出ないか」で判断することが大切です。
どうやって良くなる?ストレッチより大事な「運動」の話
痛みが強い初期の休養は不可欠です。しかし、「ただ休んで待つだけの期間」にしてしまうと、かえって復帰が遠のいてしまいます。
※ここからご紹介する研究の多くは、大人の男子選手を対象にしたものです。成長期のお子さんは、骨の端にある成長板が筋肉や腱よりも弱く、大人とは違うケガ(裂離骨折など)が起きやすいため、日数や復帰率の数字がそのまま当てはまるわけではありません。考え方の目安としてお読みください。
長引く足の付け根の痛みを抱えた成人の選手68名(各グループ34名ずつ)を対象に行われた有名な臨床試験があります。
選手を2つのグループに分け、一方は骨盤周りの筋力と体の連動性を高める能動的な運動プログラム を実施し、もう一方は電気やマッサージ、ストレッチといった受け身のケア を中心に行いました。
そその結果、痛みがなくなり元の競技レベルへ復帰できたのは、受け身のケア群がわずか4名(12%)だったのに対し、運動プログラム群は23名(68%)と大きな差がつきました(出典:Hölmich et al., 1999)。さらに、この効果は8〜12年が経過した長期の追跡調査でも持続していたことが確認されています(出典:Hölmich et al., 2011)。

ストレッチは効果がある?実は主役ではありません
「股関節が硬いならストレッチを頑張ればいい」と思われがちですが、医学データベースを網羅した研究レビューにおいて、グロインペインに対するストレッチ単独の効果を直接確かめた質の高い研究は見つかっていません(出典:Afonso et al., 2021)。
これはストレッチが無意味という意味ではなく、「伸ばすだけでは不十分」ということです。本当に優先していただきたいのは、次のような「骨盤を安定させ、正しく筋肉を働かせる運動」です。

膝の間にクッションを挟んでキープする運動 (5〜10秒キープ)
股関節を大きく動かさずに、太もも内側の筋肉(内転筋)を安全に刺激できるため、初期の段階から取り入れられます。
体幹トレーニング(プランク、お尻上げなど)
走る・蹴るといった動作で骨盤がブレないよう、体の中心を支える力を高めます。
お尻の横の筋肉(中殿筋など)を使う運動
ボールを蹴るとき、軸足で片脚立ちになった瞬間に骨盤が横へグラッと落ちるのを防ぎます。
※いずれの運動も、スクイーズテストなどで痛みが「0〜2(気にならない程度)」に収まる範囲で行うのが大原則です。
どのくらいの期間で良くなる?早く戻るための考え方
成人の男子アスリートの、軽度から中等度の急な内転筋のケガに対して、しっかり基準に基づいたリハビリ運動を進めた場合、痛みが落ち着くまで中央値で13日、チームの全体練習へ完全復帰するまで中央値で18日 という調査結果が報告されています(出典:Serner et al., 2020)。
整形外科で医師からよく「まず2週間様子を見ましょう」と言われるのは、この時間的な目安と一致しています。
ただし、これは「痛みの出ない範囲で計画的に運動を進めた場合の2週間」 です。ただ安静にして筋肉が衰えるのを待っていただけの2週間とは、体の中身がまったく異なるのです。

いつ試合に戻していい?復帰の基準と4つのステップ
お子さんを試合や練習に戻す判断は、「〇日経ったから」という日数ではなく、明確な「クリア基準」で判断してください。
「普段の生活で痛みが消えたこと」と「サッカーの激しい動きに耐えられること」は、全くの別物だからです。
次の4つのステップを1つずつクリアしながら進めていきます。

早歩き・軽いジョギング・体幹運動
クッション挟みや体幹の運動から始めます。
→次に進む条件: 歩行と軽いジョギングで全く痛みが出ないこと。
ランニング・直線ダッシュ・ジグザグ走
ペースを上げたランニングや切り返しの動きを加えます。
→次に進む条件: 100%の全力ダッシュでも全く痛みが出ないこと。
パス・キック・対人練習
ショートパス、強いロングキック、1対1の対人練習まで戻します。
→次に進む条件: どんな角度・強さでボールを蹴っても痛みが出ないこと。
全体練習 → 練習試合 → 公式戦
チームの全体練習に合流し、段階的に試合へ戻ります。
復帰の条件: ステップ3を終えた「翌日」にも痛みがぶり返さないこと。
もし途中で「3以上」の痛みが出た場合は、焦らずにひとつ前のステップへ戻してください。それは「まだこの強度は早かった」とお子さんの体が教えてくれたサインです。
テストをクリアしてから復帰することの大切さは、データでも示されています。決められた痛みのテストをクリアしてから復帰した選手の1年以内の再発率は5%だったのに対し、クリアしないまま戻った選手では21%(約5人に1人)でした(出典:Serner et al., 2020)。

また、無事に復帰できたあとも太もも内側の補強運動を続けてあげてください。男子サッカー選手652名を調べた研究では、補強運動を継続したチームは鼠径部トラブルのリスクが41%低かったと報告されています(出典:Harøy et al., 2019)。

※この段階表は復帰の手順を整理するための目安です。最終的な競技復帰の判断は、主治医の先生にご確認ください。
骨盤の裂離骨折との見分け方|成長期の子どもだけの注意点
大人のグロインペインと異なり、成長期のお子さんだからこそ、ぜひ知っておいていただきたいトラブルがあります。それが「骨盤の裂離(剥離)骨折」です。
成長期のお子さんの骨盤には、骨が伸びるための「成長板(軟骨組織)」があります。大人の骨と違ってまだやわらかいため、全力でボールを蹴ったりダッシュしたりした瞬間に、筋肉の強い力に引っ張られて骨の一部が成長軟骨ごと剥がれてしまうことがあるのです。
| チェック項目 | 骨盤の裂離(剥離)骨折 | グロインペイン症候群 |
|---|---|---|
| 痛みの始まり方 | 突然起きる (蹴った瞬間「バキッ」「ブチッ」と音がした、強烈な断裂感) | じわじわと始まる (最初は練習後の違和感から徐々に悪化) |
| 痛む範囲 | 骨の出っ張り部分の「ここ」と指差せる一点。腫れや内出血を伴うことも | 足の付け根から太もも内側にかけての「やや広い範囲」 |
| 歩けるかどうか | 体重をかけると激痛が走り、足を引きずったり歩けなくなったりする | 痛がりながらも歩行自体はできることが多い |
10代のアスリート453例を分析した文献レビューによると、骨盤裂離骨折がもっとも多く起きる場所は「上前腸骨棘(骨盤の前上にある骨の出っ張り)」で全体の37%を占めていたと報告されています。分析の対象となった選手の年齢は13.6〜16.8歳(中学生〜高校生)でした(出典:Di Maria et al., 2022)。
こんな症状があれば、すぐに医療機関へ
次のような症状が見られる場合は、様子を見ずにすぐ受診してください。
- 足に体重をかけられず、一人で立てない・歩けない
- 蹴った瞬間に「バキッ」と音が鳴り、その場から動けなくなった
- じっとしていてもズキズキと激しく痛み、夜も眠れない
- 熱が出ている、または足の付け根や股関節が熱を持って赤く腫れている
- 股関節が何かに引っかかったようにロックされ、全く動かない
- 下腹部や陰嚢(睾丸の周辺)に激しい痛みや急な腫れがある
受診先は基本的に整形外科です。ただし陰嚢の激しい痛みや急な腫れだけは、整形外科ではなく泌尿器科か救急外来へ 向かってください。時間の勝負になる病気が隠れていることがあります。
なお、レントゲン撮影で「骨に異常なし」と言われた場合でも安心しきれないケースがあります。 レントゲンには、筋肉や腱の微小な傷、初期の骨のむくみ(骨挫傷)、股関節の軟骨の損傷などは写らないためです。「レントゲンでは問題ないと言われたけれど、休んでも痛みが引かない」という場合は、主治医にMRI検査について相談してみることをおすすめします。
痛むのは足の付け根、でも本当の原因は別の場所にある|作業療法士の視点
「痛む場所は足の付け根だけれど、本当の原因はそこではない」——これこそが、私たちがもっともお伝えしたい真実です。

これを示す非常に興味深い臨床研究があります。
足の付け根に痛みを抱える男子アスリート205名(平均24.9歳)に対し、内転筋だけを単独で鍛える運動は行わず、体幹・骨盤・股関節がスムーズに連動して動くことに焦点を当てたリハビリを実施しました。
その結果、全体の73%の選手が平均9.9週間で痛みなく競技に戻り、内転筋だけを鍛えていないにもかかわらず、内転筋の筋力数値もはっきり改善していました。切り返しの動きを分析すると、軸足側へ体が倒れ込むブレが減り、骨盤が進みたい方向へスムーズに回るようになっていました(出典:King et al., 2018)。
この研究結果から分かるのは、「痛む場所ばかりをもみほぐす」のではなく、「本来働くべきなのにサボってしまっている筋肉を見つけ出す」ことこそが大切だということです。
当院では、作業療法士として医療現場で19年間、お子さんの体の動きや発達に深く向き合ってきた視点から、「いま、どの筋肉がうまく使えていないのか?」を丁寧に評価することから始めます。
お腹の奥の深層筋なのか、骨盤を支えるお尻の横なのか、それとも足首の硬さなのか——原因はお子さん一人ひとりによって全く異なります。
実例|サッカーをする小学5年生の13日間
ここで、整形外科で「2週間休むように」と言われたあと当院へお越しくださった、小学5年生のお子さんの実際の経過をご紹介します。
【症例のお子さんのプロフィール】
- サッカーをする小学5年生の男の子(週5日練習・試合)
- 主訴:「ボールを蹴るときと、走るときに右の足の付け根が痛い」
- 痛みの程度:10段階中「7」
【痛みを訴えた日からの経過タイムライン】
| 経過日数 | お子さんの状態とアプローチの流れ |
|---|---|
| 痛みを訴えた日 | キックとダッシュで右足の付け根に強い痛み(10段階中7) |
| 6日後 | 🍁当院を初来院・評価・施術 股関節を胸に抱え込む動きと、脚を外に開く動きと、脚をまっすぐ上へ持ち上げる動作で強い痛み。恥骨筋・長内転筋・腸腰筋の付着部に顕著な硬さを確認。ソフトな手技で緊張をゆるめる。緩めた後に痛みが緩和されていたため、翌日の試合の判断は保護者に任せた。 |
| 7日後 | チームの試合に出場したが、まだ走る・蹴る動作で痛みが残ると報告あり。痛みの戻りが早いため、整形外科の受診を勧める。 |
| 8日後 | 🏥整形外科を受診 レントゲン撮影を行い骨に異常なし。「症状と圧痛の位置からグロインペイン症候群でしょう」との見立て。医師から「2週間サッカーを休止するように」 と指示。 🍁MOMIJI評価・施術 当院で痛みの出ない範囲での段階的な運動アプローチを開始 |
| 9日後 | 股関節を胸に抱え込む動きと、脚をまっすぐ上へ持ち上げる動作での痛みが消失(脚を開く動きにはまだ違和感残る) |
| 11日後 | 🍁MOMIJI評価・施術 押したときの痛み(圧痛)、脚を開く動きでの痛みが完全に消失。 ただし、シャドーでのキック動作ではまだ痛みが残る。この日、お尻の横の筋肉(中殿筋)がうまく使えていないことを新たに特定。徒手で整え、運動学習を行う。自宅でも1日1回の正しい動かし方を再学習してもらう(5分程度) |
| 13日後 | キック動作も含め、すべての動作で痛みが消失。 |
評価で見つかった「2つの課題」
① 硬く縮こまっていたところ
太ももの内側の筋肉(恥骨筋・長内転筋)、お腹の奥深くの筋肉(腸腰筋)、そして太ももの外側の筋肉(大腿筋膜張筋)。とくに太もも内側の硬さが顕著で、股関節を深く曲げたり、脚を横に開いたりした瞬間に強い痛みが出ていました。
② 本来の力を出せていなかった筋肉
太ももの前側の筋肉がうまく機能しておらず、ももをお腹へ引き上げる動きが弱くなっていました。さらに後日のチェックで、軸足を支えるお尻の横の筋肉(中殿筋)の弱さも見つかりました。
痛んでいたのは太ももの内側でしたが、原因は別の筋肉が働いていなかったことにあったのです。
実際に行ったアプローチの順番

緊張をやさしくゆるめる
バランスボールを活用しながら股関節・腰・骨盤の緊張を解き、硬くなっていた筋肉の付け根をソフトにリリース(※痛む場所を強く揉むようなことは一切しません)。
その場ですぐ再チェックする
ゆるめた直後に同じ動きをしてもらうと、股関節を抱え込む動きも開く動きも、その場で痛みが大幅に軽減 しました。
痛くない状態で、正しい使い方を体に教え込む
痛みが引いている今のうちに、膝の下に小さなボールを入れて、これまで使えていなかった太もも前側の筋肉を単独で動かす練習を行いました。
全身の連動性を取り戻す
ストレッチポールの上に仰向けになり、骨盤のブレを抑えながら体幹とお尻を使って重心をコントロールするエクササイズを実施。背骨・骨盤・股関節が滑らかに連動して動く感覚を再構築しました。
この「手技でゆるめてから、すぐ正しい運動につなげる」という順番が極めて重要です。
手技で硬さをゆるめると、一時的に「痛みの出ない時間」が生まれます。しかしそのまま何もしなければ、日常の癖ですぐ元の硬さに戻ってしまいます。痛みのない時間のうちに、使えていなかった筋肉を動かし、脳と体に正しい動かし方を覚えてもらうことこそが目的です。
この実例から保護者の方に知ってほしいこと
受診から5日(発症から13日)で痛みが消失しましたが、これは初期の段階で無理なプレーをやめられたこと、骨折がなかったことなど良い条件が重なった結果であり、誰でも短期間で痛みが消えることを保証するものではありません。
そして、保護者の方に特に心に留めていただきたいのは、「11日後の時点で、患部を押しても脚を開いても全く痛くなかったのに、キックの動作をするとまだ痛みが残っていた」 という事実です。
もしこの時点で「押しても痛くないからもう平気ね!」と試合に出場させていたら、再発のリスクが極めて高かったと考えられます。「触って痛くないこと」と「全力でプレーできること」の差を見極めることが、再発を防ぐ決定的なポイントです。
※上記は個人の経過であり、特定の効果を保証するものではありません。改善のスピードや経過には個人差があります。
MOMIJIができること・できないこと
MOMIJIの役割は、「なぜその子の、その場所にばかり負担が集中してしまったのか」という原因を見つけ、再発しにくい体づくりをサポートすることです。
当院で「できないこと」
当院は医療機関ではないため、レントゲンやMRIによる画像検査は行えません。骨折や軟骨の損傷などを医学的に診断することもできません。そのため、まだ整形外科を受診されていないお子さんには、まず医療機関での受診をおすすめしています。
当院が「できること・得意としていること」

- 現在のお子さんの痛みの段階を客観的に評価すること
- 強い痛みを伴わない非常にソフトな手技で、硬くこわばった筋肉をやさしくゆるめること
- 作業療法士としての19年の経験に基づき、「働けていない筋肉」を見つけ出すこと
- 筋肉をゆるめた直後の痛まない時間を使って、正しい体の使い方を身につける運動を行うこと
- 医療機関での指示(安静期間など)を尊重しながら、休んでいる間に安全にできる個別メニューをご提案すること
- 復帰に向けたステップを保護者の方と一緒に確認し、チームの指導者(コーチ)への相談の仕方を整理すること
実際にご来院くださった保護者の方からは、このような温かいお声をいただいています。



※個人のご感想であり、効果を保証するものではありません。
お子さんの足の付け根の痛み、一人で悩んでいませんか?
総社市の女性・こどもの整体院 MOMIJI では、作業療法士として医療現場で19年の経験を持つ女性院長が、お子さんの体の使い方を評価し、「痛みを繰り返さず、思いきりスポーツを楽しめる体」を目指してサポートいたします。
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よくある質問
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おわりに
整形外科で「グロインペイン症候群」と告げられたとき、「このままサッカーを続けられなくなったらどうしよう」と不安に思われる保護者の方はたくさんいらっしゃいます。
ですが、どうか焦らないでください。適切な運動アプローチを行うことで、多くの選手が無事に復帰しています。長期化したケースであっても、運動プログラムに取り組んだ研究では68〜73%の選手が痛みなく競技に戻っています(出典:Hölmich et al., 1999/King et al., 2018)。また、テストをクリアしてから戻った選手の1年以内再発率は5%に抑えられています(出典:Serner et al., 2020)。
覚えておいていただきたい大切なポイントは、次の3つです。
- ただ休んで待つだけの2週間にせず、痛みの出ない範囲でできる運動を進めること
- 「〇日経ったから」ではなく、「全力動作で痛みが出ないか」という基準で復帰を決めること
- 競技へ戻ったあとも、週1〜3回の補強エクササイズを習慣にすること
そして何より、足の痛みを我慢せず、お父さんやお母さんに「痛い」と打ち明けてくれたお子さんを、「痛いって、ちゃんと教えてくれてありがとうね」 と、たくさん褒めてあげてください。
スポーツを頑張る子どもたちにとって、練習を休むことは勇気がいる決断です。違和感を隠さずに口に出せたこと自体が、復帰へ向けた大切な第一歩です。
休んでいる期間は、決して立ち止まっている時間ではありません。自分の体とじっくり向き合い、これまで以上にしなやかで強い体を手に入れるための「大切な準備期間」です。
この記事の内容は、動画(18分57秒)でもご覧いただけます。もう一度確かめたいときや、ご家族・指導者の方と一緒に見るときにもお使いください。
分からないことや不安なことがあれば、いつでも気軽にご相談くださいね。お子さんが再びピッチの上で思いきりボールを蹴られる日を、応援しています。

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施術中は出られない場合がありますが、折り返しご連絡いたします。
参考文献
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- Hölmich P, et al. Effectiveness of active physical training as treatment for long-standing adductor-related groin pain in athletes: randomised trial. Lancet. 1999;353(9151):439-43. 10.1016/S0140-6736(98)03340-6
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