サッカーをするお子さんが整形外科で「グロインペイン症候群(鼠径部痛症候群)」と言われ、「これからどうすればいいのだろう……」と不安を抱えていらっしゃる保護者の方へ。
この記事では、お子さんに起きている痛みの正体、ご自宅でできる簡単なチェック法、回復を遅らせないための注意点、そして試合へ復帰させる確かな目安について、医学論文のデータと当院での実例をもとに分かりやすくお伝えします。
お伝えしたい大切なポイントは、次の2つです。

- 「ただ休む」のではなく、休んでいる間に何をするか
- 復帰させるかどうかは、日数ではなく「実際の動作で痛みが出ないこと」で決める
グロインペイン症候群とは、足の付け根(鼠径部:そけいぶ)やその周辺に痛みが出る状態をまとめた呼び名です。どこか1か所の骨や靭帯を痛めた単独のケガではなく、太ももの内側・お腹の奥・恥骨・股関節など、いくつもの場所への負担が重なって起きるため、「症候群」と呼ばれています。
グロインペイン症候群とは?症状と、どんな痛みが出るのか
キックやダッシュ、急な切り返しのたびに足の付け根へ少しずつ負担が積み重なり、ある日「痛い」と気づく——これがもっとも多い始まり方です。
転んで骨が折れるようなケガと違って「いつ痛めたのか」という瞬間がはっきりしないため、お子さん自身も違和感をうまく言葉にできず、気づいたときにはかなり症状が進んでいた……というケースが少なくありません。
国際的には、2014年に14か国24名の専門家が集まって用語を整理したDoha(ドーハ)合意 によって、痛む場所ごとに大きく次の5つに分類されています(出典:Weir et al., 2015)。

| 分類(タイプ) | 主に痛む場所 | 痛みが出やすい動作 |
|---|---|---|
| 内転筋関連 (最多) | 太ももの内側、恥骨のすぐ近く | インサイドキック、脚を横に開く、両膝を閉じる |
| 腸腰筋関連 | 足の付け根の前側、お腹の深いところ | もも上げ、脚を後ろへ引く、ダッシュ |
| 鼠径管関連 | 下腹部、足の付け根の少し上 | 上体起こし(腹筋運動)、咳やくしゃみ、急な切り返し |
| 恥骨関連 | 骨盤の前の中央(恥骨結合部) | 走る・蹴る・切り返すなどサッカーの動作全般 |
| 股関節関連 | 股関節の奥深く | 深く曲げて内側へひねる、あぐらをかく |
痛みの感じ方も、「内側がピキッと引っ張られる」「ボールを蹴る瞬間にズキッと走る」「奥のほうが重だるくズーンと痛む」など、痛む場所によってさまざまです。
痛むタイミングが教えてくれること
「練習の前は痛がっていたのに、動いている最中は平気そう。でも練習が終わるとまた痛がる」——これがいちばん見逃しやすい要注意パターンです。
ウォーミングアップで体が温まると、一時的に痛みを感じにくくなっているだけで、組織への負担はどんどん蓄積していきます。お子さんが「練習中は平気だから大丈夫!」と言っていても、安心はできません。
また、「朝起きて最初の一歩」や「座った状態から立ち上がる瞬間」に突っ張るように痛むのは、筋肉や腱のこわばりのサイン です。さらに練習の有無に関係なく、夜じっとしていてもズキズキ痛むような場合は、組織がかなり過敏になっている状態と考えられます。
どんな子どもがなりやすい?原因とサッカーに多い理由
13〜19歳を対象にした複数の研究をまとめた分析では、約12%(およそ8人に1人)に股関節や足の付け根の痛みが見られると報告されています(出典:French et al., 2020)。 決して珍しいトラブルではありません。
研究で指摘されている「なりやすい主な要因」は次の通りです。
- 過去に同じ場所を痛めた経験がある (もっとも大きな要因)
- 太ももの内側の筋力、とくに「筋肉が伸ばされながら踏ん張る力」が落ちている
- 股関節の動きが硬い (とくに脚を内側へひねる動きや、外へ開く動きで動かせる範囲が狭い)
- 練習量が急に増えた、あるいは休養日が不足している
サッカー少年・少女にグロインペイン症候群が圧倒的に多いのは、強いキック動作に加え、ダッシュ・急停止・素早い方向転換による激しい「ねじれ」が股関節へ繰り返し加わるためです。
また、成長期は急激に身長が伸びて骨が成長する一方で、筋肉の発達が追いつきにくく、まだやわらかい骨盤に強い牽引力(引っ張られる力)がかかりやすいデリケートな時期でもあります。
股関節が硬いと、なぜ足の付け根が痛むのか?
股関節がスムーズに動かない分を、骨盤の前側(恥骨:ちこつ)が無理に肩代わりしてしまうからです。
たとえば、股関節を内側にひねる柔軟性が落ちていると、ボールを蹴ったり切り返したりするたびに骨盤のつなぎ目が余計にグラグラと動いてしまいます。その結果、恥骨や太ももの内側の筋肉の付け根に、過度なねじれの力が集中してしまうのです。
当院でも、足の付け根を痛がるお子さんの体を評価すると、次のような筋肉が硬くなっているケースが非常によく見られます。
- 太ももの内側の筋肉(恥骨筋・長内転筋) :脚を内側に閉じる筋肉
- お腹の奥深くの筋肉(腸腰筋:ちょうようきん) :太ももをお腹へ引き上げる筋肉
- 太ももの外側の筋肉(大腿筋膜張筋:だいたいきんまくちょうきん) :骨盤と股関節を外側から支える筋肉
これらの筋肉が硬くこわばったままボールを蹴り続けると、同じ場所に負担がかかり続けてしまいます。
ただし「硬いから痛い」と単純には言えません
実は筋肉の硬さは、痛みの「原因」であると同時に、体を守ろうとした「結果」でもあります。
傷んでいる場所や不安定な関節があると、体は「これ以上傷めないようにしよう!」と反射的に周りの筋肉をギュッと固めてガードします。医学研究でも、関節の硬さがもともとの原因だったのか、痛みをかばって硬くなった結果なのかは、はっきりと切り分けられていません。
だからこそ、「硬くなっているところを無理にストレッチして伸ばす」だけでは元に戻らない のです。
体が「もう筋肉を固めて守らなくても大丈夫だ」と安心できる状態——つまり、体幹やお尻の筋肉がしっかり働いて骨盤が安定した状態——を作ってあげない限り、いくらほぐしてもすぐにまた固まってしまいます。
我慢して長引かせると、組織そのものの質が変わることも
「できるだけ早い段階でケアを始めたほうがいい」とお伝えするのには、明確な理由があります。
痛みを我慢しながら何カ月も無理をしてプレーを続けたケースでは、恥骨の周りにある腱の膜(前恥骨腱膜複合体:ぜんちこつけんまくふくごうたい)の組織自体が変性してしまう様子がMRIで確認されています(出典:Bisciotti et al., 2024)。
そうなると、股関節の動きの悪さを骨盤が肩代わりし、さらに組織が傷んで動きが悪くなる……という悪循環から抜け出しにくくなってしまいます。まだ一時的な「筋肉のこわばり」の段階のうちに適切に手を打てるかどうか ——それが、スムーズに復帰できる子と長引いてしまう子の大きな分かれ目のひとつです。
おうちでできるセルフチェック|コペンハーゲン5秒スクイーズテスト
「足の付け根、痛くない?」と聞いても、お子さんが「大丈夫!」としか答えてくれない——そんなときに役立つ、痛みを数字で客観的に把握できる方法があります。
これはデンマークの研究機関で開発され、667名のサッカー選手を対象にその信頼性が確かめられた「コペンハーゲン5秒スクイーズテスト」という評価法です(出典:Thorborg et al., 2017)。

【おうちでのやり方】
仰向けで、両膝を立てる
お子さんに仰向けで寝てもらい、両膝を立てます。
両膝の間に腕を挟む
保護者の方の腕(または握りこぶし)を、お子さんの両膝の間に挟みます。
5秒間、全力で挟んでもらう
「5秒間、力いっぱいギューッと膝で挟んでみて」と声をかけます。
痛みを0〜10の数字で答えてもらう
そのとき足の付け根に痛みが出たかどうか、0(全く痛くない)から10(これ以上ないほど痛い) までの数字で答えてもらいます。
【判定のめやす】
| 数字(痛みレベル) | 信号 | おうちでの考え方・対応 |
|---|---|---|
| 0〜2 | 🟩 青信号 | 段階的に運動の強度を上げていってよい範囲 |
| 3〜5 | 🟨 黄信号 | 練習量や強度を落とし、痛みの出ない範囲に調整する |
| 6〜10 | 🟥 赤信号 | 負荷のかかる運動はいったん中止し、しっかり休養をとる |
※「3以上」の痛みが出た場合は、それ以上無理に繰り返さないでください。何度も痛みを確かめようとすると、傷んでいる組織を刺激してしまいます。数日に1回、体調を確かめる一環としてやさしく行ってみてください。
痛みが「数字」で見えるようになると、親子での会話が前向きに変わります。
「痛いの?本当に大丈夫なの?」と問い詰めるのではなく、「今日は『3』だったから、今日の練習はキックをお休みして体幹トレーニングにしておこうか」と、客観的な事実をもとに落ち着いて相談できるようになりますよ。
※このテストは、保護者の方が日々のコンディションを把握するための目安です。医療機関での検査に代わるものではありません。強い痛みや気になる症状がある場合は、まず整形外科などの医療機関へご相談ください。
やってはいけないことは?5つにまとめました
「早く良くしてあげたい」という親心からのケアが、かえって回復を遠ざけてしまうことがあります。
とくに注意していただきたいNGポイントを5つにまとめました。

痛がる場所をグイグイ強く揉む
足の付け根の痛む部分は、筋肉や腱に微細な傷や炎症が起きている可能性があります。強い力で揉むと、傷口を押し広げて悪化させる恐れがあります。当院でも痛む部位そのものを強く揉むことはいたしません。
痛みを我慢させて無理に開脚ストレッチをさせる
「体が硬いからだ」と無理やり股関節を開かせようとすると、傷んでいる太もも内側の腱や骨の付着部を無理に引っ張ることになり、かえって痛みを強めてしまいます。
湿布・アイシング・電気だけで様子を見る
冷やしたり電気をあてたりすると一時的に楽になることはありますが、低下した筋力や骨盤のグラつきといった根本的な問題は、こうした受け身のケアだけでは変わりません。
痛み止めを飲ませて無理に試合へ出す
痛みはお子さんの体が発している「これ以上動かすと壊れてしまう」という大切な危険信号です。薬で痛みだけを麻痺させてプレーさせると、重症化して長期離脱につながるリスクがあります(薬の使用については主治医にご相談ください)。
「2週間休んだから」と日数だけで復帰させる
これがもっとも多い落とし穴です。「安静期間が過ぎたから大丈夫」と復帰させても、キックやダッシュの動作で痛みがぶり返すケースが多発します。復帰は日数ではなく「実際の動作で痛みが出ないか」で判断することが大切です。
どうやって良くなる?ストレッチより大事なことがあります
痛みが強い初期の休養は不可欠です。しかし、「ただじっと寝て待つだけの期間」にしてしまうと、かえって復帰が遠のいてしまいます。
長引く足の付け根の痛みを抱えた選手68名を対象に行われた有名な臨床試験があります。
選手を2つのグループに分け、一方は骨盤周りの筋力と体の連動性を高める能動的な運動プログラム を実施し、もう一方は電気やマッサージ、ストレッチといった受け身のケア を中心に行いました。
その結果、痛みがなくなり元の高い競技レベルへ復帰できたのは、受け身のケア群がわずか4名だったのに対し、運動プログラム群は23名 と圧倒的な差がつきました(出典:Hölmich et al., 1999)。さらに、この効果は8〜12年が経過した長期の追跡調査でも持続していたことが確認されています(出典:Hölmich et al., 2011)。

ストレッチは効果がある?実は主役ではありません
「股関節が硬いなら、毎日ストレッチすれば良くなるはず」と思われがちですが、世界中の医学データベースを網羅した2021年の研究レビューにおいて、グロインペインに対するストレッチ単独の効果を確かめた研究は1本も見つかりませんでした (出典:Afonso et al., 2021)。
これは「ストレッチに全く意味がない」ということではありませんが、ストレッチだけを頑張ってもグロインペインは根本改善しにくい ということを示しています。
本当に優先していただきたいのは、次のような「骨盤を安定させ、正しく筋肉を働かせる運動」です。

膝の間にクッションを挟んでキープする運動 (5〜10秒キープ)
股関節を大きく動かさずに、太もも内側の筋肉(内転筋)を安全に刺激できるため、初期の段階から取り入れられます。
体幹トレーニング(プランク、お尻上げなど)
走る・蹴るといった動作で骨盤がブレないよう、体の中心を支える力を高めます。
お尻の横の筋肉(中殿筋など)を使う運動
ボールを蹴るとき、軸足で片脚立ちになった瞬間に骨盤が横へグラッと落ちるのを防ぎます。
※いずれの運動も、コペンハーゲン5秒スクイーズテストなどの評価で痛みが「0〜2(気にならない程度)」に収まる範囲 で行うのが大原則です。
どのくらいの期間で良くなる?早く戻るための考え方
軽度から中等度の太もも内側の筋損傷に対して、しっかり基準に基づいたリハビリ運動を進めた場合、痛みが落ち着くまで中央値で13日、チームの全体練習へ完全復帰するまで中央値で18日 という調査結果が報告されています(出典:Serner et al., 2020)。
整形外科で医師からよく「まず2週間様子を見ましょう」と言われるのは、この時間的な目安と一致しています。
ただし、これは「痛みの出ない範囲で計画的に運動を進めた場合の2週間」 です。ただ安静にして筋肉が衰えるのを待っていただけの2週間とは、体の中身がまったく異なるのです。
いつ試合に戻していい?復帰の基準と目安
お子さんを試合や練習に戻す判断は、「〇日経ったから」という日数ではなく、明確な「クリア基準」で判断してください。
「普段の生活で痛みが消えたこと」と「サッカーの激しい動きに耐えられること」は、全くの別物だからです。
次の4つのステップを1つずつクリアしながら進めていきます。

早歩き・軽いジョギング・体幹運動
クッション挟みや体幹の運動から始めます。
→次に進む条件: 歩行と軽いジョギングで全く痛みが出ないこと。
ランニング・直線ダッシュ・ジグザグ走
ペースを上げたランニングや切り返しの動きを加えます。
→次に進む条件: 100%の全力ダッシュでも全く痛みが出ないこと。
パス・キック・対人練習
ショートパス、強いロングキック、1対1の対人練習まで戻します。
→次に進む条件: どんな角度・強さでボールを蹴っても痛みが出ないこと。
全体練習 → 練習試合 → 公式戦
チームの全体練習に合流し、段階的に試合へ戻ります。
復帰の条件: ステップ3を終えた「翌日」にも痛みがぶり返さないこと。
もし途中の段階で「3以上」の痛みが出た場合は、焦らずにひとつ前のステップへ戻してください。それは失敗や後戻りではなく、「まだこの強度は早かったよ」とお子さんの体が教えてくれた大切なサインです。
実際、この段階的な基準をきちんとクリアしてから競技へ復帰した選手は、1年以内の再発率がわずか5% だったのに対し、基準を守らず見切り発車で復帰してしまった選手では21%(およそ5人に1人)が再発 していました(出典:Serner et al., 2020)。
また、無事に復帰できたあとも、週に1回で構いませんので太もも内側の補強運動を習慣として続けてあげてください。ノルウェーのサッカー選手652名を対象とした大規模研究では、週1回の補強運動を継続したチームは、鼠径部トラブルの発生が41%も少なかった と実証されています(出典:Harøy et al., 2019)。
※この段階表は、保護者の方や指導者の方が復帰のプロセスを整理するためのめやすです。最終的な競技復帰の可否は、主治医の先生にご確認いただくことをおすすめします。
骨盤裂離骨折との見分け方|成長期の子どもだけの注意点
大人のグロインペインと異なり、成長期のお子さんだからこそ、ぜひ知っておいていただきたいトラブルがあります。それが「骨盤の裂離(剥離)骨折」です。
成長期のお子さんの骨盤には、骨が伸びるための「成長板(軟骨組織)」が存在します。大人の骨と違ってまだ骨がやわらかいため、全力でボールを蹴ったり急激にダッシュしたりした瞬間に、筋肉の強い力に引っ張られて骨の一部が成長板ごと剥がれてしまうことがあるのです。
| チェック項目 | 骨盤の裂離(剥離)骨折 | グロインペイン症候群 |
|---|---|---|
| 痛みの始まり方 | 突然起きる (蹴った瞬間「バキッ」「ブチッ」と音がした、強烈な断裂感) | じわじわと始まる (最初は練習後の違和感から徐々に悪化) |
| 痛む範囲 | 骨の出っ張り部分の「ここ」と指差せる一点。腫れや内出血を伴うことも | 足の付け根から太もも内側にかけての「やや広い範囲」 |
| 歩けるかどうか | 体重をかけると激痛が走り、足を引きずったり歩けなくなったりする | 痛がりながらも歩行自体はできることが多い |
10代のアスリート453例を分析した文献レビューによると、骨盤裂離骨折がもっとも多く起きる場所は「上前腸骨棘(骨盤の前上にある骨の出っ張り)」で全体の37%を占めており、好発年齢は13.6〜16.8歳(中学生〜高校生)と報告されています(出典:Di Maria et al., 2022)。
こんな症状があれば、すぐに医療機関へ
次のような症状が見られる場合は、整体や自宅ケアで様子を見るのではなく、すぐに受診してください。
- 足に体重をかけられず、一人で立てない・歩けない
- 蹴った瞬間に「バキッ」と音が鳴り、その場から動けなくなった
- じっとしていてもズキズキと激しく痛み、夜も眠れない
- 熱が出ている、または足の付け根や股関節が熱を持って赤く腫れている
- 股関節が何かに引っかかったようにロックされ、全く動かない
- 下腹部や陰嚢(睾丸の周辺)に激しい痛みや急な腫れがある
受診先は基本的に整形外科です。ただし陰嚢の激しい痛みや急な腫れだけは、整形外科ではなく泌尿器科か救急外来へ 向かってください。時間の勝負になる病気が隠れていることがあります。
なお、レントゲン撮影で「骨に異常なし」と言われた場合でも安心しきれないケースがあります。 レントゲンには、筋肉や腱の微小な傷、初期の骨のむくみ(骨挫傷)、股関節の軟骨の損傷などは写らないためです。「レントゲンでは問題ないと言われたけれど、休んでも痛みが引かない」という場合は、主治医にMRI検査について相談してみることをおすすめします。
痛いのは足の付け根、でも原因はそこにない|作業療法士の視点
「痛む場所は足の付け根だけれど、本当の原因はそこではない」——これこそが、私たちがもっともお伝えしたい真実です。

これを示す非常に興味深い臨床研究があります。
足の付け根に痛みを抱えるアスリート205名に対し、あえて痛む太もも内側の筋肉(内転筋)を直接鍛える運動を一切行わず、体幹・骨盤・股関節がスムーズに連動して動くことだけに焦点を当てたリハビリを実施しました。
すると、全体の73%の選手が平均9.9週間で痛みなく競技へ完全復帰 を果たし、低下していた内転筋の筋力も自然と本来の強さに戻っていました。選手の動きを詳しく分析すると、走ったり切り返したりするときに体が外側へグラッと倒れ込む無駄な動きが減り、骨盤がスムーズに行きたい方向へ回るようになっていたのです(出典:King et al., 2018)。
この研究が教えてくれるのは、「痛む場所ばかりをどうにかしようとする」のではなく、「本来働くべきなのにサボってしまっている筋肉を見つけ出す」ことこそが、復帰への最短ルートになる ということです。
当院では、作業療法士として医療現場で19年間、お子さんの体の動きや発達に深く向き合ってきた視点から、「いま、どの筋肉がうまく使えていないのか?」を丁寧に評価することから始めます。
お腹の奥の深層筋なのか、骨盤を支えるお尻の横なのか、それとも足首の硬さなのか——原因はお子さん一人ひとりによって全く異なります。
実際、次にご紹介する当院の実例でも、トラブルの根本原因は痛む足の付け根とは別の場所にありました。
実例|サッカーをする小学5年生の13日間
週に5日の練習があり、大会も次々に入ってくる時期。そんなときにお子さんが「足の付け根が痛い」と言い出したら、休ませるべきか、もう少し様子を見るべきか——判断に迷われる保護者の方は本当に多いです。
ここからご紹介するのは、まさにその状況で当院へお越しくださったお子さんの記録です。痛みを訴えた日から痛みが消えるまでの13日間 を、日を追ってそのまま残しました。
整形外科で「2週間休むように」と言われたあと、その後どう過ごしたのか。そして、痛む場所とは別のところに原因が見つかるまで の流れを、順を追ってご覧ください。
ここでご紹介したいのは、整形外科で正しくグロインペイン症候群の診断を受けた後、MOMIJIの整体で痛みの原因を評価し、「硬くこわばった場所を手技でやさしくゆるめ、その直後に、うまく使えていなかった筋肉を動かす練習をする」ことの大切さです。
【症例のお子さんのプロフィール】
- サッカーをする小学5年生の男の子
- 週5日の練習・試合に参加
- 主訴:「ボールを蹴るときと、走るときに右の足の付け根が痛い」
- 痛みの程度:10段階中「7」
【痛みを訴えた日からの経過タイムライン】
| 経過日数 | お子さんの状態とアプローチの流れ |
|---|---|
| 痛みを訴えた日 | キックとダッシュで右足の付け根に強い痛み(10段階中7) |
| 6日後 | 🍁当院を初来院・評価・施術 股関節を胸に抱え込む動きと、脚を外に開く動きと、脚をまっすぐ上へ持ち上げる動作で強い痛み。恥骨筋・長内転筋・腸腰筋の付着部に顕著な硬さを確認。ソフトな手技で緊張をゆるめる。緩めた後に痛みが緩和されていたため、翌日の試合の判断は保護者に任せた。 |
| 7日後 | チームの試合に出場したが、まだ走る・蹴る動作で痛みが残ると報告あり。痛みの戻りが早いため、整形外科の受診を勧める。 |
| 8日後 | 🏥整形外科を受診 レントゲン撮影を行い骨に異常なし。「症状と圧痛の位置からグロインペイン症候群でしょう」との見立て。医師から「2週間サッカーを休止するように」 と指示。 🍁MOMIJI評価・施術 当院で痛みの出ない範囲での段階的な運動アプローチを開始 |
| 9日後 | 股関節を胸に抱え込む動きと、脚をまっすぐ上へ持ち上げる動作での痛みが消失(脚を開く動きにはまだ違和感残る) |
| 11日後 | 🍁MOMIJI評価・施術 押したときの痛み(圧痛)、脚を開く動きでの痛みが完全に消失。 ただし、シャドーでのキック動作ではまだ痛みが残る。この日、お尻の横の筋肉(中殿筋)がうまく使えていないことを新たに特定。徒手で整え、運動学習を行う。自宅でも1日1回の正しい動かし方を再学習してもらう(5分程度) |
| 13日後 | キック動作も含め、すべての動作で痛みが消失。 試合に完全復帰。 |
評価で見つかった「2つの課題」
① 硬く縮こまっていたところ
太ももの内側の筋肉(恥骨筋・長内転筋)、お腹の奥深くの筋肉(腸腰筋)、そして太ももの外側の筋肉(大腿筋膜張筋)。とくに太もも内側の硬さが顕著で、股関節を深く曲げたり、脚を横に開いたりした瞬間に強い痛みが出ていました。
② 本来の力を出せていなかった筋肉(サボり筋)
太ももの前側の筋肉がうまく機能しておらず、とくにももをお腹へ引き上げる筋肉 がしっかり使えていませんでした。さらに後日のチェックで、軸足を支えるお尻の横の筋肉 の弱さも見つかりました。
痛んでいたのは太ももの内側でしたが、トラブルの根本原因は別の筋肉が働いていなかったことにあったのです。
実際に行ったアプローチの順番

緊張をやさしくゆるめる
バランスボールを活用しながら股関節・腰・骨盤の緊張を解き、硬くなっていた筋肉の付け根をソフトにリリース(※痛む場所を強く揉むようなことは一切しません)。
その場ですぐ再チェックする
ゆるめた直後に同じ動きをしてもらうと、股関節を抱え込む動きも開く動きも、その場で痛みが大幅に軽減 しました。
痛くない状態で、正しい使い方を体に教え込む
痛みが引いている今のうちに、膝の下に小さなボールを入れて、これまで使えていなかった太もも前側の筋肉を単独で動かす練習を行いました。
全身の連動性を取り戻す
ストレッチポールの上に仰向けになり、骨盤のブレを抑えながら体幹とお尻を使って重心をコントロールするエクササイズを実施。背骨・骨盤・股関節が滑らかに連動して動く感覚を再構築しました。
この「手技でゆるめてから、すぐ正しい運動につなげる」という順番が極めて重要です。
手技で硬さをゆるめると、体が張っていた過剰な警戒アラートが解除され、一時的に「痛みの出ない時間」が生まれます。しかし、そのまま何もしなければ、日常生活や歩行の癖ですぐに元の硬さに戻ってしまいます。痛みのない時間のうちに、眠っていた筋肉を正しく目覚めさせ、脳と体に正しい動かし方を再学習してもらうこと こそが最大の目的です。
実際、医学研究においても、「徒手療法(手技)と運動療法を組み合わせたグループ」は、「運動療法単独のグループ」に比べてスポーツ復帰までの期間が有意に早かった(平均12.8週 対 17.3週)と報告されています(出典:Weir et al., 2011)。ただしこの研究では、最終的な完全復帰率自体はどちらのグループも約50〜55%にとどまっており、研究者らは「手技だけで良くなるわけでも、運動だけで十分なわけでもない」と指摘しています。手技で整えることは、運動療法をスムーズに進めるための大切な架け橋 なのです。
この実例から保護者の方に知ってほしいこと
整形外科の主治医からは「痛みが引くまで2週間程度。比較的再発しやすい症状です」と説明を受けていました。結果として受診から5日(発症から13日)で痛みが完全に消失しましたが、「これをすれば誰でも5日で痛みが消える」という魔法のような方法はありません。
早期に痛みが引いた背景には、レントゲンで骨折や骨の異常がなかったこと、初期の段階で無理なプレーをやめて動き出せたこと、そして何よりお子さんが「ここが痛い」と正直に教えてくれたことなど、良い条件が重なった結果だと考えています。
そして、保護者の方に特に心に留めていただきたいのは、「11日後の時点で、患部を押しても脚を開いても全く痛くなかったのに、キックの動作をするとまだ痛みが残っていた」 という事実です。
もしこの時点で「押しても痛くないからもう平気ね!」と試合に出場させていたら、再発のリスクが極めて高かったと考えられます。「触って痛くないこと」と「全力でプレーできること」の差を見極めることが、再発を防ぐ決定的なポイントです。
※上記は個人の経過であり、特定の効果を保証するものではありません。改善のスピードや経過には個人差があります。
MOMIJIができること・できないこと
私たちMOMIJIの役割は、「なぜその子の、その場所にばかり負担が集中してしまったのか」という根本原因を突き止め、再発しない体づくりをサポートすることです。
最初にお伝えしておきたいのは、当院で「できないこと」 です。
当院は医療機関ではないため、レントゲンやMRIによる画像検査は行えません。骨折や軟骨の損傷などを医学的に判断することもできません。そのため、まだ整形外科を受診されていないお子さんには、まず医療機関での受診をおすすめしています。 また、「〇回で痛みが消えます」といった無責任なお約束もいたしません。
そのうえで、当院が「できること・得意としていること」 は次の通りです。
- コペンハーゲン5秒スクイーズテスト等を用い、いまのお子さんの痛みの段階を客観的に評価すること
- 強い痛みを伴わない非常にソフトな手技で、硬くこわばった筋肉をやさしくゆるめること
- 作業療法士としての19年の経験に基づき、「働けていないサボり筋肉」を的確に見つけ出すこと
- 筋肉をゆるめた直後の痛まない時間を使って、正しい体の使い方を再教育するエクササイズを行うこと
- 背骨・骨盤・股関節が滑らかに連動してしなやかに動く感覚を取り戻すこと
- 医療機関での指示(安静期間など)を尊重しながら、休んでいる間に安全にできる個別メニューをご提案すること
- 復帰に向けたステップを保護者の方と一緒に確認し、チームの指導者(コーチ)への相談の仕方を整理すること
当院の施術はバキバキ骨を鳴らすようなものではなく、とてもやさしいタッチで行います。痛む場所を強く揉むこともありません。お子さんが怖がったり緊張したりしないよう、体の仕組みを分かりやすくお話ししながら進めますので、「整体が初めて」という保護者の方もどうぞご安心ください。
実際にご来院くださった保護者の方からは、このような温かいお声をいただいています。



※個人のご感想であり、効果を保証するものではありません。
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総社市の女性・こどもの整体院 MOMIJI では、作業療法士として医療現場で19年の実績を持つ女性院長が、お子さんの体を多角的に評価し、「痛みを繰り返さず、笑顔でスポーツを続けられる体」 を目指して親身にサポートいたします。
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よくある質問
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おわりに
整形外科で「グロインペイン症候群」と告げられたとき、多くの保護者の方が「このままサッカーを続けられなくなったらどうしよう」「次の大会には間に合わないのだろうか」と、強い不安と焦りを感じられたことと思います。
ですが、どうか安心してください。医学研究のデータが示す通り、この症状の見通しは決して暗いものではありません。
数カ月以上痛みが長引いてしまったケースであっても、適切な運動プログラムに取り組んだ選手の73〜79%が痛みなく元の競技レベルへ復帰 しています(出典:King et al., 2018/Hölmich et al., 2011)。また、焦らずに復帰基準を守って段階的に戻れば、1年以内の再発率はわずか5%程度に抑えられます(出典:Serner et al., 2020)。
覚えておいていただきたい大切なポイントは、次の3つです。
- ただ寝て待つだけの2週間にせず、痛みの出ない範囲でできる運動を進めること
- 「〇日経ったから」ではなく、「全力動作で痛みが出ないか」という基準で復帰を決めること
- 競技へ戻ったあとも、週に1回の補強エクササイズを継続すること
そして何より、足の痛みを我慢せず、お父さんやお母さんに「痛い」と打ち明けてくれたお子さんを、「痛いって、ちゃんと教えてくれてありがとうね」 と、たくさん褒めてあげてください。
スポーツを頑張る子どもたちにとって、練習を休むことはとても勇気がいる決断です。痛みを隠して無理をし続けることが、もっとも回復を長引かせてしまいます。違和感を口に出せたこと自体が、復帰へ向けた素晴らしい第一歩なのです。
休んでいる期間は、決して立ち止まっている無駄な時間ではありません。自分の体とじっくり向き合い、これまで以上にしなやかで強い体を手に入れるための「大切な準備期間」です。
分からないことや不安なことがあれば、いつでも気軽にご相談くださいね。お子さんが再びピッチの上で思いきりボールを蹴り、とびきりの笑顔を見せてくれる日を、私たちが全力で応援しています。

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参考文献
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本記事の内容は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の状態についての評価に代わるものではありません。セルフチェックや段階表の結果は目安であり、医療機関での検査に代わるものではありません。気になる症状がある場合は、医療機関にご相談ください。※体験談は個人の感想であり、効果を保証するものではありません。


